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夏を表現するアーティストたち

夏を表現するアーティスト

真夏に生まれたせいなのか、夏が大好きだ。

学校に馴染めなかった子ども時代、大阪の祖父母の家に滞在できる夏は、私にとって「非現実」でありながら、「本当の自分」に戻れる季節だった。

夏を表現する作品に出会うと、心が喜ぶような感覚があり、いつまでも浸っていたいと感じる。そんな癒しの時間をくれる「夏の表現が素敵なアーティストたち」を、ジャンルを問わずに紹介していきたい。

宮崎駿さん(映画監督)

まずは言わずと知れたアニメ映画の巨匠、宮崎駿さん。

宮崎さんのジブリ映画は日本の夏の情景が描かれていることが多く、特に「風」と「雲」が印象的な作品が多い。『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』『風立ちぬ』などがまさに夏を描いた作品の代表作だろう。

『風立ちぬ』が公開された頃だろうか。読んだ本の中で、宮崎さんと美術を担当された方が一緒に屋上に出て、雲を観察することが多かったと語っていた記憶がある。「この感じの雲が良い」とか話し合って、イメージする情景をつくり上げているらしいのだ。

青い空に立ち上がる入道雲、風で揺れる草、そして揺れ動く主人公の心の描写は、いつだって私を子ども時代の夏に連れて行ってくれる。

宮崎さんへのインタビューをまとめた本『風の帰る場所』の表紙に描かれているのも、夏の情景だ。

▼『風の帰る場所』(宮崎 駿)

久石譲さん(作曲家)

映画音楽を手掛ける作曲家、久石譲さんも夏を表現するアーティストだ。

久石さんほど、音楽だけで夏を表現できる人はいないのではないだろうか。久石さんの曲を聴くと、夏の情景だけでなく、子ども時代の楽しくも切ない気持ちまでもが蘇るから不思議だ。

北野武監督の映画『菊次郎の夏』のためにつくられたオリジナル曲『Summer』が流れると、夏の切なさと儚さが、一瞬にして蘇る。

同じ映画の中で流れる『The Rain』も隠れた名曲だ。雨が降りしきる夏の景色が目に浮かぶような切ない曲だが、中盤で徐々に曲調が変わり、『Summer』に曲が移り変わることが印象的だ。その様子は雨が止んで再び歩き出すような光景をイメージさせるようで、何度聴いても鳥肌が立つ。

ジブリ映画の中だと、『千と千尋の神隠し』で流れる曲『あの夏へ』が夏を思い出させる一曲だと思う。ピアノによるイントロが始まると、思い通りにならない子ども時代の切なさに引き込まれて、思わず泣きそうになってしまう。

▼『菊次郎の夏』サウンドトラック

▼『千と千尋の神隠し』サウンドトラック

永井博さん(イラストレーター)

トロピカルで鮮やかな夏の作品を描く、イラストレーターの永井博さん。

永井さんが描くのは日本の夏ではなく、1970年代頃のアメリカのイメージで、行ったことがないはずなのに、どこか懐かしいバカンスを思い起こさせる。

その背景として永井さんは、「1973年夏にアメリカへ40日間の旅行に出掛け、1974年にグアム島へ旅して風景に感銘を受け、以降の作風の原点となった。」のだという。(wikipediaより)

私が永井さんを知るきっかけとなったのは、大瀧詠一さんの作品『A LONG VACATION』のアルバムジャケットだ。大瀧さんの名曲『君は天然色』が収録された有名なアルバムなのだが、ブルーの空に白いパラソルが描かれた表紙が印象的だった。

永井さんはアメリカの海やプールを中心に描いているが、バブル期のような夜景のイラストもノスタルジックで何とも素敵だ。いつか永井さんの作品集を手元に置きたいと密かに想っている。

▼ 『Time goes by…』永井博作品集

▼『NITEFLYTE』永井博の“夜景シリーズ”

嵐田大志さん(写真家)

フィルム風のノスタルジックな写真を得意とする、写真家の嵐田大志さんが表現する夏も大好きだ。

少し色あせたフィルム写真のような色調が特徴的で、日常的な東京の都市風景がメインで撮られているため、どこか身近な感覚があり、懐かしさも感じる。

双子の息子さん2人と末っ子の娘さんを映した写真は、家族で過ごした夏休みの情景をそのまま残しているかのよう。嵐田さん本人も「夏生まれだから夏が好き」と仰っており、同じく夏生まれの私は大きく共感してしまう。

作品だけでなく、嵐田さんの写真に対する考え方も好きだ。カメラの機能が中心に語られることが多い中で、著書『カメラじゃなく、写真の話をしよう』では、写真に何をどのように映すことが大切なのかが語られている。

いつか私も、心に触れるような写真を撮れるようになりたいものだ。

▼『カメラじゃなく、写真の話をしよう』嵐田大志

まとめ

夏は本当に魅力的な季節だ。

生命を感じるようなみずみずしい新緑の緑に、青い空と立ち込める入道雲。夏休みの中で日常の喧騒から離れて、ただ時間を過ごすことを楽しんだ子ども時代。そんな夏があったからこそ、ここまで生きてこれたのだと思っている。

夏を表現するアーティストたちの作品は、大切な子ども時代へ、いつだって私を連れて行ってくれるのだ。

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