衣服と肌のどちらにお金をかけようか
生きているだけでとにかく、お金がかかることが多い。
ただでさえ、洋服やスキンケア、化粧品、美容院と出費が多いというのに、今の時代は脱毛なんかも当たり前になって、選択と集中をしなければ簡単にお金が足りなくなってしまう。
かくいう私も気づけばお金がピンチになるタイプの人間だが、もしこの中で1つ選ぶとするなら、「肌」への投資を選ぶだろう。
今回は、私が肌を大切にしたいと思う理由について書いていきたいと思う。
肌は着替えることができない
肌を一番大切にしたいと思う理由は、「肌はこの世で一番最後まで着る衣服」だからだ。
洋服は何度でも着替えられるし、ネイルもすぐに変えられる。だけど肌はどうだろう?生まれた瞬間から、魂が身体を脱ぎ捨てるまで、肌は着替えることができない。
アジア人初のトップモデルである山口小夜子さんは、次のように語っている。
行きついた答えは、服は身体を保護するもので、身体はこころの真の衣服、こころは身体を着ているということです。
着替えることの出来ない身体だからこそ、大切にしたいと思うようになりました。
『山口小夜子 未来を着る人』より
この一節を読んだとき、彼女ほど「衣服」と「身体」、そして「こころ」の関係性を真剣に考え、独自の答えを見出した人がいるだろうかと衝撃を受けたことを覚えている。
山口小夜子さんとの出会いをきっかけに、私も「着替えることの出来ない身体」を大切にしようと思うようになり、衣服か肌の片方にしかお金をかけられないようなときには、肌を選択するようになったのである。
衣服は個性を表現するもの
一方で衣服は、自分らしさ、個性を表現するものとして大切だと考えている。
私はお金に余裕がないことが多く、高い衣服を買うことはあまりできない。しかし高価な衣服でしか個性を出せないということはなく、安価なもの・ありふれたものであっても、自分というフィルターを通して選ばれた衣服は、独自の「個性」を発揮しているように思う。
また、人の身体は唯一無二のものであり、身体にまとわれた衣服も唯一無二の形になる。私の骨格を覆う衣服は、私の色に染まっているように感じる。
肌は「魂が最後の瞬間まで着る衣服」だから大切にしないといけないけれど、衣服は「その時々の自分を表現してくれる相棒」のような存在なんじゃないかと思うのだ。
ここでも「衣服」に対する山口小夜子さんの言葉を残しておきたい。
身体の70%は水で出来ています。その水の身体を包む衣は土の栄養や太陽エネルギーを十分に吸収した繊維を紡いで織られます。そして丁寧に裁断し縫製され、多くの人の手を経て服が生まれ店頭に並びます。
たくさんの工程は自然の摂理を含んだたくさんの命そのものです。
『山口小夜子 未来を着る人』より
まとめ
以上が、衣服か肌のどちらかへの投資を選ぶなら、私は「肌」を選ぶという理由である。
しかし衣服をないがしろにしたい意図はなく、余裕がないときにはお金をかけずとも、自分らしいものを選びたいと考えている。
ちなみに山口小夜子さんは晩年、衣服や肌だけでなく、空間そのものまでも「着る」ことができると考えていたようだ。彼女の思想に興味をもっていただけたらぜひ『山口小夜子 未来を着る人』を読んでみて欲しい。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました!
▼『山口小夜子 未来を着る人』(東京都現代美術館)
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