竹内まりや『シングル・アゲイン』を令和の時代に聴くことの意味

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かつての楽曲を時代を超えて聴くことには、意味がある。

そう思うのは、主題歌となった当時のドラマや楽曲に込められたストーリーを知らずに、まっさらな状態で聴くことができるから。

先入観をもたずに聴くことで、まっすぐにこみ上げてきた純粋な想いに、じっくりと向き合うことができるのです。

今回は、日本テレビ『火曜サスペンス劇場』の主題歌(1989年~1990年)として制作された竹内まりやさんの楽曲、『シングル・アゲイン』について語ります。

目次

『シングル・アゲイン』との出会い

『シングル・アゲイン』との出会いは、つい最近の出来事。

先日YouTubeで公開された2時間ドラマ『友近サスペンス劇場』にて、友近さんが歌うオリジナルソングが『シングル・アゲイン』をオマージュして作られたことを知り、この曲と出会いました。

友近さんの曲は『ジャスト・アローン』。
“ただ独り”という曲名に友近さんのセンスが光っています。

▼『友近サスペンス劇場』、めちゃくちゃ面白かったです

『純愛ラプソディ』や『みんなひとり』など、竹内まりやさんの好きな楽曲はたくさんありますが、『ジャスト・アローン』はまた違った魅力のある素敵な曲だと感じました。

『シングル・アゲイン』の魅力

楽曲の魅力について、個人的な観点から語りたいと思います。

正直な想い

『シングル・アゲイン』の一番の魅力は、人間らしさが溢れる、正直な想いが綴られた歌詞でしょう。

辛い恋愛をしたときの心の痛みは、表現しがたいものです。

誰かに寄り添ってほしいという想いや、すべて忘れてしまいたい気持ち、早く前を向きたいという想いが絡み合い、生々しい感情を正直に吐き出すことは難しいのではないでしょうか。

『シングル・アゲイン』では、その複雑な感情が飾らずに表現されています。

サビ部分の歌詞は特に秀逸です。

言葉の表現力が高い竹内まりやさんだからこそ、重かったり恨めしかったりしてしまう人間の正直な想いを、歌として伸びやかに表現することができたのではないでしょうか。

共感性の高い言葉

共感性の高い言葉が用いられている点も、『シングル・アゲイン』の魅力の1つです。

辛い恋愛と言っても、さまざまな形があります。

幸せな交際期間があったにも関わらず不本意な形で終わってしまった関係や、信じていたのに結ばれることもなく終わってしまった恋。

誰もが異なる経験をしていることでしょう。

この曲を聴いた時にこみ上げてくるのは、心から信じていた恋愛が不本意な形で終わったときの、やるせない感情。

どんな形の恋愛を想起するにしても、「その辛い感情、味わったことあるなあ」と、誰もが自分の経験に合わせて聴くことができるのも、『シングル・アゲイン』の素晴らしさなのです。

軽やかなメロディと歌声

「辛かった恋愛を思い出す」という重いテーマでありながら、メロディは軽やかであるというギャップが、曲の魅力を一層引き立てています。

序盤はしっとりと落ち着いた調子ですが、サビに入るとメロディは一転して軽やかになります。

それでありながら、歌詞はより感情を強めていくのです。

歌詞と曲調のギャップは竹内まりやさんが得意とするところですが、『シングル・アゲイン』は複雑な心境を思わせる歌詞と軽快なメロディのギャップが、強烈なインパクトを残す楽曲となっています。

『シングル・アゲイン』を考察

ここからは、『シングル・アゲイン』の歌詞をじっくりと考察していきます。

1番Aメロ

あなたを連れ去る あの女性の影に
怯えて暮らした 日々はもう遠い
離れてしまえば 薄れゆく記憶
愛していたのかも 思い出せないほどよ

しっとりとしたメロディに乗せて、ようやく忘れようとしていた辛い恋愛の記憶が描かれています。

1番サビ

また独りに返ったと 風の便りに聞いてから
忘れかけた想いが 胸の中でざわめく
私と同じ痛みを あなたも感じてるなら
電話ぐらい くれてもいいのに

これまでのメロディとは一転して、軽やかな調子で歌われるサビ。

「噂に聞いた」など様々な表現ができる中で、あえて「風の便りに聴いてから」という言葉を使った点に、竹内まりやさんのセンスが光っています。

サビに入るまでは、「愛していたのかも思い出せないほど」と言っていたけれど、それは本当に時間をかけて努力をして、思い出を消し去ろうとしていただけだとわかります。

なぜなら、彼がまた独りになったという噂を耳にしただけで、胸がざわめいてしまうのだから。

「私と同じ痛みを あなたも感じてるなら」の部分では、自分を苦しめた相手が同じ思いをすれば少しは報われるのに、というあまりにも人間らしい正直な気持ちが表現されています。

2番Aメロ

変わり続けてく 街並みのように
もとには戻れない 若き日のふたり
彼女を選んだ理由さえ聞けずに
ただ季節は流れ 見失った約束

盛り上がりを保ったサウンドと共に語られる、「彼女を選んだ理由さえわからない」という未消化の想い。

心の中に居座り続けるモヤモヤとした感情は、何年も人を苦しめるものです。

2番サビ

もし再び出会って 瞳を探り合っても
隔てた時間を埋めるすべは何ひとつない
手放した恋を今 あなたも悔やんでるなら
やっと本当のさよならできる

「もし再び出会って」という想像がされていることから、愛であれ憎しみであれ、彼に対していまだに強い想いがあることが感じられます。

そしてやはり、彼も同じように失恋に苦しみ、自分を選ばなかったことを後悔してくれたらいいのに、と願ってしまうのです。

大サビ

また独りに返ったと 風の便りに聞いてから
忘れかけた思いが 胸の中でざわめく
手放した恋を今 あなたも悔やんでるなら
やっと本当のさよならできる

最後にクライマックスを迎えて曲は終了となります。

『シングル・アゲイン』の本当の意味

大好きな曲となった『シングル・アゲイン』について、たっぷりと語らせていただきました。

曲を聴いて純粋にこみ上げてきた私の想いを書いたのですが、「交際していた男性が自分を捨てて他の女性と結婚した後に離婚し、再び “独身” (シングル) になったという噂を聞いた女性の揺れる複雑な心情を描写した」というのが本当のストーリーであるようです。

どんなストーリー設定があるのにしても、自分の経験と照らし合わせて共感できてしまう点に、竹内まりやさんの表現力の高さが感じられますね。

ここまで生々しく人間らしさを表現している楽曲は、現代にはあまりないように思います。

秀逸な言葉のセンスを味わえることにこそ、かつての曲を時代を超えて聴く意味があるのかもしれません。

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