幼い頃、モノが溢れた雑貨屋のような大叔父の家が好きでした。
ステンドグラスのランプに、紙でできた飛行機の模型、細かなパズルの大作に、大きな梅酒のガラス瓶。
大叔父の家に置かれたモノたちは、生活の役には立たないはずなのに、妙に心をワクワクさせて、想像力をグングンと膨らませてくれる魅力があったのです。
西荻窪の「どんぐり舎」はまさに”モノが溢れた喫茶店”で、空間を飾る骨董品たちを眺める度に、幼い頃の純粋な好奇心が顔を出します。
▼どんぐり舎が掲載されている本
どんぐり舎
どんぐり舎といえば、音楽と珈琲を愛するマスターが営む喫茶店です。
家族揃って珈琲が好きだったことがきっかけで、現在のマスター・河野三郎さんの父親が1974年(昭和49年)に創業。
珈琲は自家焙煎にこだわっており、店頭で豆を買うこともできます。
「焙煎は温度計に頼ってはダメだ」と教えられ、感覚でベストな状態を見極める技を身に付けたという河野さん。
季節や気候によって火加減を微調整し、安定した味を維持することに神経を注いでいるのだそうです。
音楽を愛するマスターは、朝はクラシック、その後はジャズを流すのがお決まり。
私が訪れる日はいつも静かにジャズが流れていて、スピーカーから流れ出る音に耳を傾けながら、こだわりの珈琲をいただく時間は静かにマスターの情熱を感じます。
外観
西荻窪駅の北口から歩くこと3分。
小さな道をひたすらまっすぐに進むと、緑で囲われたリスの家のような建物が曲がり角に現れます。
白く光る看板には、「自家焙煎 挽売 珈琲店 どんぐり舎」という文字と、仮面のような顔をした不思議な人の絵が描かれているのが何とも独特。
少し開いた木の扉は「いらっしゃい」と手招きをしてくれているようで、私は迷わずその不思議な空間に足を踏み入れました。
内観
どんぐり舎にはたくさんのモノたちが溢れています。
古材で作られた褐色の壁に飾られているのは、木でできた手作りのメニュー表。
小さなカウンターには、大きく産地が描かれた珈琲豆の瓶が立ち並んでいて、あちこちにある本棚には古本や漫画がギュウギュウに詰められています。
切り株や石など、「一体何に使うのだろう」と思うような骨董品まで置かれていて、店に佇むモノたちに不思議な魅力を感じてしまいます。
ふと目線を上げると、壁に飾られたジャズアーティストたちの写真が目に入り、マスターの好みが垣間見えた気がしました。
モノも音楽も全てマスターの”好き”が詰まった空間だからこそ、この小さな空間には独特な世界が広がっているのでしょう。
私がつくづく思うのは、喫茶店とはマスターの趣味がギュッと詰まった部屋のような場所だということ。
本や映画、音楽など人の心が感じられるものが好きだけれど、喫茶店もマスターという人の心の現れだと思うと、なおさら愛しくて仕方がないものです。
メニュー:どんぐりクッキーセット
珈琲にはブレンド3種類、ストレート7種類の用意があって、一番人気は「ほろ苦ブレンド」。
ピザトーストやジャムトーストなど軽食の用意もあって、どれも手作りの美味しさで人気なのだとか。
私はいつも「どんぐりクッキーセット」(730円)を「ほろ苦ブレンド」をでいただきます。
少し酸味の効いた深みのあるブレンド珈琲をいただきながら、どんぐりの形をした大きなクッキーを頬張りました。
モノに溢れた小さな空間でモグモグとどんぐりを食べていると、リスにでもなったかのような気分です。
珈琲もどんぐりクッキーも素朴な味わいなのだけれど、その華美ではない美味しさが西荻窪という飾らない街にぴったりで、何だか妙に落ち着いてしまいました。
店舗情報
西荻窪に佇む小さな喫茶店、どんぐり舎。
マスターの”好き”が詰まったモノたちに囲われて、こだわりの珈琲と素朴な味わいの軽食をいただく時間を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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