1964年に、今と同じ場所・新宿駅西口の「思い出横丁」で創業された、「但馬屋珈琲店」。
大正ロマンを感じさせる内装と、上質な珈琲へのこだわりが話題を呼び、長く愛され続けてきた喫茶店です。
本店がある新宿の他に、吉祥寺と池袋に5店舗を展開。日本の喫茶文化に貢献し続けている存在だといえます。
50年以上変わらずにあるその魅力に触れたくて、但馬屋珈琲店の本店を訪れてみました。
▼但馬屋珈琲店 本店が掲載されている本
新宿駅西口で独特の存在感を放つ建物
私が但馬屋珈琲店と出会ったのは、新宿の繁華街を歩いていたときのこと。
駅から3分ほど歩いたところに、ドラッグストアや飲み屋が建ち並ぶ中で、唯一の木造建築が圧倒的な存在感を放っていることに気が付きました。
店の前には、懐かしさが漂う食品サンプルが置かれていて、妙な味わい深さを感じます。
後々調べてみると、元は闇市場だった「思い出横丁」の中で、たった一つの純喫茶店だという話です。
日を改めて、日曜日の午前10時半頃に訪れると、店内はタバコを吹かす人で賑わっている様子。
人気の喫茶店であることが一目で理解できました。
大正ロマンを感じる内装
扉を開けると、焦茶色の木で統一された古民家のような空間が広がっていました。
古いカレンダーや時計などの調度品が、大正ロマンを感じさせます。
コンセプトである「大人のひととき通の味」を体現するために、内装にもこだわりをもっているようです。
天井にはさまざまな形をしたランプが吊るされていて、薄暗い店内を温かく照らしています。
タバコと珈琲の香りが漂う大人な空間に、陽気なジャズが流れるギャップが何とも心地良い。
店内を見渡すと、一人で読書をする人やタバコを吸う人、友人と会話を楽しむ人など、さまざまな人が各々の時間を楽しんでいます。
私はカウンター席に座って、ネルドリップで丁寧に珈琲が淹れられる様子を眺めました。
手間のかかるネルドリップをおこなっているところに、珈琲へのこだわりが強い喫茶店であることが感じられます。
カウンターの棚には、世界各地から集められた高級な珈琲カップの数々が。
この中から客の雰囲気に合ったカップで珈琲が提供されるのも、サプライズのようで素敵です。
但馬屋珈琲店のメニュー
但馬屋珈琲店のメニューにズラリと並ぶ、数々のこだわりの珈琲。
珈琲は自家焙煎と極粗挽きでの粉砕、特製ネルドリップでの抽出にこだわっているそうです。
世界各地から厳選した珈琲豆が、常時16種類以上取り揃えられているため、さまざまな味わいを楽しむことができます。
珈琲以外にも独創的なメニューが多く、「珈琲ぜんざい」や「横丁サバラン」、「鉄鍋フレンチトースト」など、個性あふれる甘味が魅力的。
この日は、「特選オリジナルブレンド」の珈琲と、「2種のテリーヌショコラ ペアリングセット」を注文しました。
特選オリジナルブレンド
店の個性が一番感じられるブレンド珈琲で、但馬屋珈琲店の味わいを堪能することにします。
特選オリジナルブレンドは、コロンビア、ブラジルなど4種類の豆をそれぞれ焙煎してからブレンドしたもの。
ストレートの珈琲では味わえない、豊かなコクと濃厚な苦味を創り出しているそうです。
実際にいただいてみると、酸味が少なく、しっかりとした苦味が感じられました。
一杯で充分満足することができる重厚な風味です。
また、ネルドリップならではのヌルっとした口当たりが何とも上品な一杯でした。
2種のテリーヌショコラ
珈琲のお供に注文したのは「2種のテリーヌショコラ ペアリングセット」。
オレンジピール香る濃厚なテリーヌショコラと有機栽培の抹茶テリーヌをいただけるメニューです。
運ばれてきたのは、和風のお皿に丁寧に乗せられたショコラと抹茶のテリーヌ。
岩塩と生クリームが添えられています。
いただいてみると、ショコラのテリーヌは、オレンジの風味が大人な味わい。
岩塩を少し掛けると、塩の風味がアクセントとなってさらに複雑な味わいになりました。
一方の抹茶のテリーヌは優しい味わい。
自然な濃厚さで、生クリームと合わせるとよりまろやかに。
濃厚なテリーヌは2切れで充分に満足することができる一品でした。
店舗情報
但馬屋珈琲店が、小売店、洋品店、そして喫茶店へと姿を変えながらも、変わらずに同じ場所で愛され続けている理由。
それは高品質への徹底したこだわりと、時代を読む洞察力ゆえであるように感じました。
時代の変化に合わせて業態を変えながらも、内装と珈琲へのこだわりには手を抜かない。
その柔軟で軸のある精神には、生きていくうえで学ぶべきところがあるように思います。
内装、珈琲、そして精神面でも奥深い但馬屋珈琲店。
ぜひ週末に訪れてみてはいかがでしょうか。
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